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北海道冬期ツーリング①

2016年冬の北海道を自転車でツーリングした思い出を、取り留めもない感じで書きます。いつもは記事に書かないようなことを抽出して、日記的なことを書いてみます。装備や道の話はまた後日。

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ツーリング地として冬の北海道を選ぶにあたって

去年(2016年)の春ごろに読んだ、サイクリストの坂本達さんの本の中にこんな記述を見つけました。坂本達さんが中国だったか、どこだったか。カラコルムハイウェイを走っているとき、極寒の中峠を越え、下ったところでテントを張るシーンが出てきます。テントを張り終わった坂本さんは温度計を確認するのですが、テント内が-20℃であることを確認すると、「意外と暖かい」という当時の感想を語っています。

一方で同書によると、夏のイランを走っている時は、暑さのあまり、リタイアしてしまっているようです。自分はもともと暑いより寒いほうが好きです。これは寒いのは着方しだいで何とでもなる一方で、暑さを凌ぐのは空間そのものの温度を下げない限り、限界があるためです。これは日本国内に限らず、世界中を旅している人のスケールで語っても、同じ、と言ってよさそうです。余談ですが、汗をかくと入浴の必要性が増す、というのも暑いのが嫌いな理由の一つです。入浴はツーリングの行程を著しく制限します。

 

読者に理解されるかはわかりませんが、冬の北海道に行こうと思ったのは、そんなことが動機です。暑い中自転車に乗るのは無理なものは無理という領域があるかもしれないけど、寒いことは自転車に乗らない理由にはならないと思ったからです。目安としては、坂本達さんの「-20℃は意外と暖かい」という感想を基準にして、そのぐらいの気温までは、ちゃんと自転車に乗って野宿する必要がありそうな気がしました。だいたいそのスケールで探したとき、ちょうどいいのが冬の北海道でした。

 

1日目:女満別空港

この日は昼過ぎに輪行女満別空港に到着、明るいうちに寝床を決め、行動食等の買い物を済ませ明日の美幌峠越えに備える予定。ところが前日の深夜に雪のため欠航のメールを受信。従姉は2週間前に千歳までいくものの着陸できず、そのままセントレアに引き返していたので、冬の北海道の険しさを知る。ちなみに、普段Tシャツやレースキットの製作を行っていると、メールを見てくれない人は世の中の5パーセントくらいいることが分かるのですが、ああいう人材はこういうときどうなるのかな、と気になりました。

 

結局、同日の午後の便を取り直すことに。空港に着いたのはすっかり夜でした。冬の北海道は路面状況がよくない上に、そもそも北海道は街灯がないのでナイトライドは危険。空港のそばで適当な場所でテントを張って一晩過ごすか、と考えていると、地元のおばさんが6kmほど走った場所の女満別市街のおススメの場所を教えてくれました。ナイトライドはしたくない理由を説明するも、街灯はちゃんとあるから大丈夫と力説してくれる。もともと女満別空港にはお土産屋以外なく、まともな行動食が手に入らなかったのも相まって、おばちゃんがそこまで言うならと行ってみることに。しかし、けっきょく街灯はほとんど無く、自分の中での「旅先で地元民の言うことは信用ならない」という言説を、より強める思い出にになりました。

 

2日目:女満別摩周温泉

まずは、昨日の時点で忘れたことに気づいたminiUSBの充電ケーブルを調達します。miniUSBは何に使うかと言うとガーミンと前後のライトなので、今回非常に重要な装備の一つです。2泊以上のツーリングはライトの充電も考えなくてはならないのが一つの課題です。

 

いざminiUSBのケーブルを探して気づいたのですが、コンビニやスーパーで容易に手に入るものではありませんでした。どこも置いてあるのはライトニングケーブルか、microUSBか、ガラケー用の充電ケーブルです。ガラケーのケーブルより需要が低いというのが驚きです。ガーミンは最悪充電できなくても、ライトは充電しておきたいところなので、ライトはmicroUSBか乾電池にするのはどうかということも考えられます。しかしもとはと言えば、ガーミンと共用するためにminiUSBのものを使っているので、あちらを立てればこちらが立たずという感じです。

(2017/1/4追記)

 

この日通る美幌峠は北海道の中でもなかなか好きな部類の峠なので期待していました。峠の標高は493mと控えめながら、日本の峠でも有数の見晴らしの良さがあります。ツールドフランスなんかの映像で出てくるようなヨーロッパの風景に近いです。ぜひ画像検索してください。

 

ところが実際登ってみると、美幌峠の持つ良さは雪と相性が非常に悪いことが分かりました。雪が美幌峠のよい部分を覆ってしまい、個性がそがれてしまった印象。背の低い黄緑色の草と新緑の森、という超日本的感じはもうそこになく、雪と黒々とした木が合わさって、退廃的な雰囲気が出てしまっています。

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▲微妙…!

 

夜は摩周温泉でテントを張ります。ちなみに摩周温泉という地域は、温泉自体は湧いているものの、道の駅の足湯と、こじんまりしたペンションがついでにやっている日帰り湯のみで、とても紛らわしいことに特にこれといった入浴施設はありません。

 

3日目:女満別→阿寒湖

目覚ましをかけた6時に目を覚まし、寝袋の中で摩周湖に行くかどうか考えました。もともと阿寒湖に行く前に摩周第一駐車場までピストンをするつもりだったのです。けっきょく行きたくない理由がいくつか頭に浮かび、今回はやめておくという結論にいたりました。

 

一つ目は、昼過ぎに雨予報であったこと。その日は最低気温がいつもより10℃ほど高い程度にとても暖かく、最高気温も2℃で雨が降る予報となっていました。今回は雪への備えはあっても、雨への耐性はほとんどなく、濡れてしまったところに氷点下以下まで気温が下がると生命に危機が及ぶと判断しました。

 

二つ目は、雨予報が出ているように、そもそも朝の時点で曇っていました。摩周湖はコンディションに恵まれていないと、ほとんど見えないことで有名。晴れの摩周湖が見えれば婚期が遅れる、と言われるほど。

 

三つ目は、前掲した二つ目の理由に関連するのですが、以前、夏に来た時にほとんど完璧な摩周湖を見てしまっていることです。隣にいた地元のリピーターらしき老人が、「こんなきれいな摩周湖は見たことがない」と感激していたほどです。もう婚期は2億年くらいは遅れています。

 

以上の理由で摩周湖行きを諦め、早々と出発できたお陰で15時くらいに阿寒湖に到着。観光案内所で、温泉、ご飯屋さん、テントを張れそうな場所を聞いて、パン屋で休憩。この時点で16時なので余裕の行程、と思いきや冬の北海道なので、すでに日没しており、もうギリギリのペースです。冬の北海道は一日のペースがとにかく早い。ツーリング中は太陽に抗うことができません。

 

温泉では入浴中に、併設のコインランドリーで洗濯をしつつ、脱衣所で昨晩に不注意で濡らし凍らせてしまった寝袋とマットを乾かします。温泉街なので、温泉はいつくか選択肢がありましたが、コインランドリー併設が決め手になりました。「この店で一番分厚い靴下をくれ」と言って、好日山荘ででてきた厚手の靴下が唯一乾ききらず、もう一度回すかどうか考えていたところ、温泉のおばちゃんのご好意で、夜のうちに乾かしておいてもらい、取りに行くついでに朝風呂に入るということになりました。ちなみに朝営業は本来やっていないらしく、特別に計らってくれるとのこと。正直、野宿するなら若干湿ってても靴下はほしいと思ったけど、おばちゃんの親切を無碍にすることもできず、受け入れることにしました。

 

夜ご飯は地元の定食屋で食べることに。一人なのでカウンターにつき、深山丼(鹿肉丼)を注文。横には明らかにメニューにないものを食べている常連らしき客がいました。そのせいかどうか分かりませんが、エミューの刺身を常連客といっしょにご馳走してもらえることに。人生初のエミューを思わぬところで経験することになりました。

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エミューの刺身

 

走り回ってるだけあって脂が少なくて筋肉質だった、などと感想を伝えているうちに、それまで全くなかった会話が弾み、結局かなり長居してしまいました。これは自分の流儀なんですが、ご馳走してもらった場合は、「ちゃんと味わいました」ということを伝えるために、何かちゃんとした感想を言ったほうがいい、と考えているのですが、そういう習慣が功を奏したと思います。

 

全体的にやけに気前のいい人たちでした。この時、お店に忘れ物をしてしまうのですが、翌朝とりにいくと仕込みを中断してカニ雑炊をご馳走してくれました。阿寒湖畔に2号店を出店していたり、先代がホテルで料理長をやっているという話からして、なかなか景気がいいようです。60万円の水素水発生器使ってましたし。

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▲カニ雑炊

 

夜テントを張ろとしていると、40代くらいの女性に家に泊まるように勧めてもらえらた。しかし念のためまだ帰宅していないご主人に確認を取っていただいたところ、断られてしまい、意味もなく気まずい気分になりました。結局軒先でテントを張らせてもらうことに。温泉街で地下に温泉の管が通っていて、そこだけ暖かくなっていたので、その辺に張るよりはかなり改善しているといえます。

 

こういう時にたまに思い出すのが、やっぱり自転車で野宿しながらツーリングしている人は、普通の方からの心象が悪い、ということです。自分はまだ若者で通用する見た目をしているから、泊まっていったらどうかと誘ってもらえましたが、あと5年後はどうなるんだろう。同世代(20代半ば)でも、中年のような風貌をしている人は、「正直ぜんぜん知らんやつだったら野宿してたら怪しいと思うな」と思うこともあります。

 (2017/1/4追記)

 

続く